今回は、ASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴を持つお子様に対する、
効果的な接し方をご紹介致します。
とは言え、単にASDと言っても、かなり広い範囲で物事を見ていかなければならないので、一つの事例を設け、対象を絞りたいと思います。
ASDの特徴を持つお子様で良くある傾向に、極端な思考(俗にいう「白黒思考」)が挙げられます。
「自分は親の言う通りにしているのに…。」
「学校の先生がそう言っていたのに…。」
ASDのお子様は、言われたことをそのまま受け取る傾向にあります。
その中間が無いのですね。
特にその傾向が強いお子様だと、その中間が全くないどころか、
それ以外を悪ととらえてしまう傾向もあります。
そのため、学校でも人間関係のトラブルなどが多くなってしまいがちです。
そうして、ASDのお子様は、自己の表現が他と違うだけであっても、
どうしても自己中心的な人物だとか、そういう風に見られてしまうのです。
それが積もりに積もってしまうと、心の病気や不登校など、二次障害に繋がってしまいかねません。
そうならないために、大人たちの接し方(対応方法)をご紹介致します。
ここで事例を挙げておきます。
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先生から「皆で仲良くしなさい。」と言われ、文字通り誰とでも仲良くしなければならないと思い、グループで遊んでいる最中でも他のグループを混ぜようとし、逆にトラブルを生んでしまうお子様。
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割とある事例です。今回、この事例をもとに述べていきたいと思います。
はじめに、基本的な接し方
ここで、基本的な接し方を示しておきます。
私の本音をお伝えすれば、何か問題があった時、「叱る」というのもありだとは思います。(私一個人としては、きっちり叱らなければならない場面はあると思っています。)
しかし、それだけでは、ただ叱られたことにとどまってしまい、その先に思考が働かず、
結局どうすれば良かったのか理解できずに終わります。
ですので、基本的なことなのですが、そのお子様自身に考えてもらう、そんな接し方が大事となるのです。
この場合だと、そのお子様の考えを容認したうえで、
「一緒に遊んでいたお友達からしたら、いきなり他の人が入ってきちゃったから、びっくりたんじゃないかな。」
「せっかく一緒に遊んでいたのに、そこで遊んでいたことが中断されるのって、嫌な気持ちになってしまうんじゃないかな。」
などなど、色んなことを言ってあげられると思います。
上記の例は要するに、お子様の知らなかった、新しい価値観を伝えることに繋がります。
この繰り返しによって、お子様の気持ちの新しい着地点を作ってあげることができます。
しかしこれは、ASDの特徴がそれ程強くないお子様に対しては有効ですが、そもそも、この基本対応で上手く折り合いが付けられるようになるお子様は、それ程心配されなくて良いと思います。
先程述べましたように、ASDの特徴の強いお子様は、頑なな白黒思考を持っています。
新しい価値観を伝える事はもちろん大事ですが、それだけだと、結局どうして良いのか分からなくなってしまうのです。
繰り返しになりますが、
「自分は親の言う通りにしているのに…。」
「学校の先生がそう言っていたのに…。」
そういう気持ちになってしまうことが大いに考えられます。
ですので、以下に、ASDの特徴の強いお子様に向けた対応方法を示します。
ASDの特徴が強いお子様への対応
前言を撤回してもらう。
先ずは、学校の先生が「皆と仲良くしなさい。」と仰っていたのなら、その学校の先生に相談するのが良いでしょう。
その上で、そのお子様に対して、前言の意図をきちんと伝え直してもらいます。
「先生、そんなつもりで言ったわけではないんだけどな…。」(笑)
などでも構いません。
でも、可能ならば、きちんとした意図を伝えてもらうのが良いと思います。
言った張本人から納得がいく意図を伝えてもらうことで、本人も安心するでしょう。
言葉の定義づけをする。
前言を言い直したり、撤回することで納得するのなら、それだけで構わないかも知れません。
ですが、それだけだと、同じことを繰り返すことになってしまいます。
そこで有効なのが、言葉の定義づけでしょう。
今回のお子様の場合、「仲良くする」という言葉が全てになってしまっていて、その境界線が全く無いのがトラブルを生んでいると言えます。
ですので、「仲良くする」とは、一体どういうことなのか。
この部分を定義づけしてあげることが、同じ行動を起こさないことに繋がっていきます。
さて、あなたはこの時、どんなことを言えますか?
「普段、お話したりする子たちと、遊んだり、助け合ったりすることだよ。」
「『イヤだ。』と言う子を巻き込まないことだよ。」
など、色んな伝え方があると思いますが、それは、お子様の性格なども鑑みて伝えなければなりません。
ASD(自閉症スペクトラム障害)のお子様は、ただでさえ、自己中心的な人物として見られがちです。
しかし、上に述べた事例であっても、本当は思いやりがあるためにしたことなのです。
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