年長の男の子とひらがなのドリルをやっていた時のことです。
イラストの表情から感情の単語を選ぶ課題で、怒っている男の子・泣いている男の子、少し離れて笑っている男の子の絵が描いてありました。
表情に合った単語シールを貼った後で、
「なんでこの子は泣いているのかなぁ?」
「隣の男の子に怒られたのかも」
「じゃあ、怒っている男の子はいじめっ子なのかな?」
「離れて見ている男の子は面白がっているみたいね」
などと、お子さんと指導員であれこれ状況を想像してみました。
ドリルを終えて花丸をつけたら、片面につき1枚「がんばりシール」を貼ります。
食べ物や乗り物、人物・動物などいろいろな絵柄があるのですが、お子さんは「蟹」のシールを選んで、泣いている男の子の足元に貼りました。
「蟹がかじったの」とお子さん。
「あ!」と私は思わず声を上げました。
「そうか、男の子は痛くて泣いていたんだね。
それで、隣の男の子は蟹に怒っていたんだ!
いじめっ子じゃなくて、友達思いの優しい子だったんだね!」
「でも、この子は笑ってる」
「あはは、どっちにしても隣の子は笑って見てるだけなのね!」
とひとしきり笑いあった後で、
「始めは意地悪と思っていた男の子が、○○君が蟹のシールを貼ったら、優しい子に変わったね、ありがとう」と、お子さんに伝えました。
今までに、足元の蟹が見えず、目に飛び込んできた情報だけで反射的にジャッジをしてしまったことがあるのではないかと、自分を省みることができたからです。
口から出てしまった言葉は取り消すことができません。もし善意でしようとしていたことを頭ごなしに否定してしまったら、お子さんの心に大きな傷をつけてしまうかもしれません。せっかくのやる気を台無しにしてしまうこともあり得ます。
好ましくない(とこちらが思う)場面を見ると、「なにやってるの!」と咄嗟に声が出てしまいますが、お子さんが何をしようとしているのか、少し見守ってみてはいかがでしょうか。もしかしたら足元に小さな蟹がいることに、気付けるかもしれません。
命の危険にかかわるような差し迫った場面でない限り、時間は十分に持てるはず。
その際に、息を3つ吸って3つ吐くと「アンガーマネジメント」=怒りの気持ちのコントロールも同時に行えます。(怒りのピークは6秒と言われています。)
お子さんの柔軟な発想は、私たち大人の想像を軽く超えていきます。
「経験による思い込み」がない分、広い視野を持てるのはお子さんの方かもしれません。
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